おざなりに放り出されているのは見慣れた足甲。
すこし視線をさきにやれば。

見慣れた靴。(それはまさに投げ捨てられたという風情で)

棍を吊る帯。(三節棍も入ったままで!)

赤い上着(しわになっちゃいますよ?)

象徴の赤い首巻き。(どーするんですかー王子)


その先には、透明な蒼。
凪いだ風にさざめく他は、静かだ、とても静か。


セラス湖ののぞくその淵まで歩を進めて、青い水面を覗き込んだ。見慣れた姿がゆらりとうねる。
カイルの落とした影に気付いたのか、すぅと浮いて来た。水面が揺らぎ、白銀の髪が空気に触れる。
「これ、濡れちゃいましたよー?」
首巻きは風にあおられたのか、半分ほど水に浸かっていて、しぼればぼたぼたと水面を鳴らす。
「いいよ、干しておけばすぐ乾く」


空はどこまでも晴れて、清々しかった。
頬に触れる風は爽やかに。


「まだ、そこに居られるんですか?」
冷えて風邪ひいてしまいますよ(泣いてしまえばいいのに)

「うん、もう少し」
「わかりました」(全部飲み込んで)


(蒼に溶かして)


目の下が赤いですよ、王子(水の所為じゃないでしょう)

「上がったら、お風呂行きましょうね」









***