
天
上
の
青
は
今
日
も
「…竜?」
翼の打ちつける力強い音と、巻き上がる風。着地の振動に、誰もが固唾を飲んで見守る。翼を畳み、誉めてとばかりに擦り寄る竜の頭を竜騎士が優しく撫で、背中の籠から人影が二つ降りてくる。
「ティル殿っ…!」
―――と。
「…エチケット袋?」
否、リィだ。
竜の背中から出たとたん、地面にしゃがみこんだエチケット袋改めリィは、顔から袋を離せずにいた。もう何も吐くものはないはずなのに、こみ上げる嘔吐感。
「…だいじょうぶか?」
「・・・・・・死ぬ・・・・・」
籠の中には、封をきっちり閉めた袋が他に2,3転がっている。
服こそぼろぼろだが、たいして消耗していないティルは、ようやく周囲の状況に気づいた。気圧されるように一歩下がる。
「え、何、何このひとだかり」
「どうでもいい…海、うみ、…水はどこだ…」
ものすごい人外の呟きをうつろに漂わせ、リィは袋から手を離さない。どこかの路上のスレた不良のような有様だ。何を吸っている。
「ティル殿、お怪我は?」
レパントが尋ねてくる。おい、やめてくれよこんな人目のあるところで。
「リィの消耗がひどいようですね。客間をお借りしてもいいんじゃないですか、提督殿」
来た! 人外ファレナーズ! 内心の動揺を悟られないよう、ティルはあわててヤバいリィを助け起こすほうに回る。トレードマークのバンダナがない事が幸いだった。あれは基本的に生涯外すつもりがないので、そこからあとで面が割れるのはありがたくない。
「そっ、そーだね、レパント…様! どこか部屋を借りてもいいデスカ!」
「私が借り受けている貴賓室で構わないだろう? 不安なら、どなたでもついて来られるといい。そうだな、…アレン殿とグレンシール殿なら、護衛として問題ないでしょう?」
まさかそこまで計算していたのだろうか…。この人ならあり得る。
奪われたバンダナにそこまでの意図が隠されていたとは…。
流石にこの展開は予想外だったのか、困惑を隠せないアレンとグレンシールの二人をせっついて、ティルは場を後にした。
一方提督と女官に案内され、ティルたちが城内に消えると、あたりはものすごく心地悪い空気に包まれた。
あの、ファレナ女王国に、ケンカを、それも濡れ衣もいいところ、言いがかりでしかないケンカを、吹っかけてしまった―――!!
「さて、」
ひとまずティルたちを案内し、護衛にアレンを置いて再び戻ってきたグレンシールだったが、まるで裁定を下す審判のようなその声に、思わず肩を震わせて沙汰を待つ。
「グレンシール殿の言うとおり、ティル殿が生還しても、それだけでは真偽はハッキリしない。白黒決着つくまで、皆様沈黙を守られたほうが宜しいのでは?」
「殿下…それで、よろしいので?」
レパントが控えめに抗議した。もっと怒って構わないのだ、彼の立場としては。
「ふふ、レパント殿、付け入る隙を見せてはいけませんね。ここはトランで、私は異国人で、暗殺未遂の嫌疑がかかっているんです。もっと居丈高でもいいんですよ」
そんだけ輝いてて何が被疑者か。
腹芸はまだまだレパントのスキルとしてレベルが足りてない。はぁ、と応えたきり言葉の接ぎ穂を失ったレパントを横目に、ファルーシュはグレンシールに微笑みかけた。
なんとなくグレンシールもつられて微笑む。
「先ほどは見事でした。あなたのような兵が居るとは、トランも良い国ですね」
「お褒めにあずかり、光栄です」
お二方の演舞も、見事なものでございました。
にっこりと微笑みあう二人を持って、一連の騒動に一旦小休止がもたらされた。
なんなんだろう、このフラグ。
***
…ファルグレ??(死んで来い)
どっちかというと腹黒ーズか。(ファンのかたすみません)