天
上
の
青
は
今
日
も
刺客がすべて地に這い、動かなくなったところで我に返ったリィが口を開く。
「主犯は分かるのか」
得物を腰に戻し、乱れた銀髪を整えたファルーシュは物騒に笑う。
「問題ない、向こうから来てくれる」
「・・・殺すより捕らえた方が証拠になったんじゃないか?」
「あの薬を飲んではどうしようもない。命と引き換えの秘薬だからな」
「・・・・・・」
「これ以上は自国の恥だ、あまり深く聞いてくれるな」
「・・・戦を?」
ぽつりと呟いたティルに、ファルーシュは小さく息を吐いて答えた。
「ファレナが内乱に焼かれたのは10年前だ。官吏も変わるな、そう・・・丁度「一息」吐きたくなる頃合いだ。大国には派閥も多い。戦需は収まり政情は落ち着いて、10年前には黙ってるしかなかった連中の抱えた黒い思惑はそろそろ力も蓄えだして噴出する寸前だった。そこを赤月帝国の壊滅とトラン共和国新政府の報知だ。以前は大国であっても、戦の後の国は弱い。外からの力には・・・今のファレナなら余裕で勝てる。」
まるで舞台の筋書きを読む気安さでさらりと出された話にティルは目を見開くしか出来ない。赤月の、それも限られた知識しかなかったティルにとって、他国の侵略の脅威などマッシュの指したジョンストン都市同盟くらいのものだった。
「しかし陛下は、」
「トランの内乱には真の紋章が絡んでいる、情報を集めてみれば太陽の紋章ほどの制約もなし。英雄を殺して紋章を奪い、それをだしにして私の居ない内に陛下を傀儡に戻し、太陽の紋章の力とファレナの名のもとでトランまでの国々を属国に。道程にある国々に対した力は無いし、赤月でない新国に他国の援助の伝手は望めない、ファレナが相手ならほとんどが二の足を踏むだろうからな。ついでにその頭の悪い謀略のさなかに私に責任をなすりつけ、トランの地で死んでくれればそれこそ万々歳だ。陛下もさすがに私が死ねば黙っておくわけにもいかないだろう、・・・とか?」
話ながらファルーシュは刺客の懐を探っている。
「ファル、じゃない殿下、何して・・・」
「策の善し悪しは問題じゃない。実際穴だらけもいいとこ、というかここまで兵を派遣するのにかかる費用の計算すら出来ないくせに作戦行動に出るその愚かさ加減に嫌気がさすな。途中で頓挫する可能性が高くとも、放っておくわけにもいかないし。おおまかの目星はついてるさ・・・ああ、あった」
狼煙のようなものを取り出したファルーシュは、黙り込んだティルに手を差し伸べる。
「殿下・・・?」
「これ、もらうよ」
そう言ってファルーシュが奪ったものは、ティルの返り血に塗れたバンダナだった。なんてことだトレードマークだったのに!
「あとその赤い上着ね。あ、カイル炎の札を」
「・・・・・・」
他人のバンダナを許可無く破るファルーシュの、意図するところは分かった。嫌でも分かった。
何でこういうこと手慣れてるんだろう・・・。
疲れた心でティルはそう思った。
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ていうか実際事を起こせばゼアラントとかナガールとかアーメスも
群島も黙ってないと思うんですけどね、起こらなかったのでオケー(死)