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の
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修復の努力がみられる自宅を前に、ティルはちょっとためらっていた。
件の客人だ。あの女王騎士の知人というのだから、相当の人物なのだろう。アレンで言うグレンシールのように、双璧を成す美丈夫だったらどうしよう。何を聞かれるのか、どう答えるのか。
門の下にたたずむティルを後目に、邸内ではまだ努力が繰り広げられているようだ。
「パーンさん!そこはリィさんの方がお得意ですからお任せして、あなたは屋根の方へまわってくださいよ!傷んでる所があるんです」
「これは、干したらいいのか?」
「ああ、そっちの籠のは日にあたるところで、手に持ってるのは日陰に。裏庭はちょっと湿気が多いから避けた方がいいと思う。その2枚は乾いたら繕うからわかるようにしておいてくれ」
「クレオさん!それなら庭の木の下がいいと思いますよ」
・・・あたらしく家政婦でも雇ったのだろうか。でも何か違和感があるような。
「あ、坊ちゃん。お帰りなさい」
かごを抱えたクレオが門下に立ち尽くすティルに気付いて声をかけてきた。
「クレオ、誰か新しく雇ったの?」
思わずただいまも忘れて問えば、困ったような笑いを浮かべてクレオは首を横に振る。
「いえ、坊ちゃんを尋ねてこられたお客さんですよ」
お客をこき使ってるのか。
無言の叱責を感じて、クレオはあわてて弁解した。
「あー、えーと、その、お客さんが自分から・・・止めたんですけど、気がついたら」
何て事だ!尋ねてきた客人を、いくら屋敷が荒れてるからって、掃除に駆り出すなんて!!
「式典の言祝ぎにきた、ファレナの女王騎士の知人だろう!?国賓とまではいかなくても、かなりな人物じゃないのか?」
「城でお会いになったんですか、騎士長殿下に」
騎士長!!?殿下!!!?
綺麗で気品のあふれる方でしたねー、などとのんきに微笑むクレオが信じられない。
ティルは今にも倒れそうになった。
女王騎士より更に格上だったと判明した、その人の知人が。あろうことか自分の家の洗濯物や繕いをする。
「クレオ・・・グレミオは」
息も絶え絶えに呟けば、騒ぎをききつけて集まった家人が心配そうに声をあげる。
「ここにおりますよ、坊ちゃん!顔色が悪いです、お城で何があったんですか!?」
むしろここでとんでもないことになってるよ。ちょっと泣きたいというか、遠くへ行きたくなった。
「とりあえず、中に入った方が良くないか?」
聞き慣れない少年の声に遠ざかりかけた意識が引き戻される。声の主は腰に工具箱をつけ(中にはいっているものは専門的すぎてティルにはわからない)、バケツに汚れた水と雑巾をぶらさげ、もう片方のバケツには細かな瓦礫という掃除夫なのか大工なのかよくわからない出で立ちだ。どちらも雇った覚えもないが。
「・・・どなたですか」
最悪の可能性も捨てずに敬語で応対したティルに家人は心のなかで喝采を送る。さすが坊ちゃん!
「リィだ」
だが残念なことに群島諸国の最長老は一般常識に少々疎い。
「はぁ、群島諸国、ですか・・・」
何で敬語なんだろう。自身にツッコミをいれつつ、グレミオのいれたお茶を品良く飲む姿は背景さえなければ決まっている。背景(リフォーム中の我が家)と脳内はそれはもうパニック状態だったが。
「まぁファルーシュと知り合ったのは偶然でなりゆきに他ならないのだが」
一仕事終えたリィは(ティルが止めるにも関わらず彼は一通り部屋を片付けた。手際は150年のブランクをものともせず、むしろ現役グレミオを唸らせる手腕だ。やはり小間使いスキルは以下略)その向かいでしみじみとティルを観察する。
「ところでティルはファルーシュにどつかれなかったのか」
「は?」
質問の意味が理解出来ない。
ティルにとってファルーシュは高貴で見目良く、物腰も柔らかい、文句無しの王族という認識以外存在しない。あの華奢な体で騎士というのも不思議なくらいだ。むしろ文官だろうと踏みさえしてたのに、どつかれる?
ティルのこの思考をファルーシュが知れば、おそらく問答無用の連続攻撃が襲ってきそうだが、あいにく本人は貴賓室でつっぷして過去を否定している真っ最中だ。
「いや、少し話をしただけで」
「・・・そうか」
ティルの反応でどつかれなかったと理解したリィはちょっと沈んだ。ファルーシュはどうみても女性にしか見えないという自説が否定された(本当は違うが)。というかその前に世の中思った事をすぐに口にする単純明快(場合によってはバカ)なヤツらばかりだと思わない方がいい。海賊とか海賊とか多分親友だったヤツとか。
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またも引き蘢る前にこれだけ。
ここからまた展開がシリアスに、なる、気配はありません、ね(沈没)
なりますよ、多分。きっと。
ていうか、スノウも好きですよ・・・?